記憶に新しい今年の二月、久米島で「こんなことはない、十年に一度」と言われる大当たりホエールスイムを経験した東京店薮崎でございます。
これに味をしめて六月にはドルフィンスイムを目当てに、のこのこと御蔵島へやってまいりました。
御蔵島は東京竹芝桟橋から約8時間ほどの小さな島。
世界的にも珍しい“島付き”のイルカが約140頭ほど生活しています。
六月は出産の時期。親に守られながら泳ぐ小さな赤ちゃんイルカを見ることができます。
好奇心旺盛の子イルカにすれ違いざまに踏みつけられることもできますよ。
「ジョーが赤ちゃん連れてるよ!」
御蔵フリークでは有名なイルカのジョー。御蔵島のイルカは個体識別されており、それぞれに名前が付けられています。
その中でもジョーは一度見たら忘れられない見た目の有名なイルカです。
ジョーの背鰭は半分から上が切れてなくなっています。おそらく、船のスクリューに傷つけられたのだろうと言われています。
厳しい野生の世界で生存するだけでもハンディキャップを持つジョーが、子供を育てている。
みんなに優しく見守られている親子なんです。
頭の良いイルカが相手なので、我々観察する側もナチュラリストとしての本質が問われます。
こっちの都合だけじゃ相手にしてもらえないんです。
ワイコン付けて「よれー!突っ込めー!」みたいなやり方じゃダメなんですね。
イルカの出方を見て、相手がその気になったら遊んでもらえる。その気になってもらえるような待ち方をする。
そんなやり取りを目と目でやるもんだから、意志が通じたなんて楽しくなっちゃうんでしょうね。
実際イルカが何を考えているのか分かりませんが、鯨類と水中で眼が合うって言うのはなかなか面白い経験だと思います。
普段、スクーバ背負って無敵状態で水中にいるとついつい海にも生物にも図々しくなっていなかったか?
そうやって自然に対する姿勢を振り返りながら頬張るジェラートの味は忘れないでしょう。
いや振り返らないか。もうね、島中坂がきつくて振り返ったら落ちてっちゃいそうなくらい急でしたから。
何はともあれ、今回は皆さんそれぞれとっておきのイルカとの時間が過ごせたようで大満足していただけました。
めでたしめでたし。
あ、そうそう。
「こんなことはない、十年に一度」って出来事が御蔵島でも起きました。
とりわけ小さくて随分とシワクチャな子イルカを連れた親だなあなんて見ていたら、まだ胎盤がぶら下がったままの親子だったそうで。
人間が進めないような強い潮流の中をあっという間に泳ぎ去っていきました。
御蔵島では、出産中は過去一度観察されたことがあるそうです。一方で胎盤が取れてないほど産後間もない親子は十年に一度ほどの頻度だとか。ガイドさんは今回が二度目の目撃だったそうです。
珍しさよりも、そんなホヤホヤの赤ちゃん哺乳類があの潮流で親について泳いでいることの方が驚きでした。